銀河鉄道999?
メーテル?
違います!
言うと思ったけど笑
宮沢賢治の代表的な作品でもある「銀河鉄道の夜」
一度は読んだことがあるという方も多いのではないでしょうか。
今回はそんな銀河鉄道の夜を中田敦彦のYouTube大学で取り扱っていましたので紹介していきます。
子どもから大人まで広く読みつがれている本作。
この記事を通してぜひ宮沢賢治の世界観を覗いてみてください。
登場人物
主人公「ジョバンニ」
親友「カムパネルラ」
いじめっ子「ザネリ」
え?外国のお話?
名前はおしゃれですが舞台は大正時代の岩手県(宮沢賢治の地元)です。
この日本人的な名前ではないこともそうですが、岩手県のことを「イーハトーブ」という架空の呼び方をするなども含めて宮沢賢治独自の世界観なのです。
こういった造語や世界観の理解が難解なこともあり解説が無いと分からないということも多く、読み始めて挫折する人もいます。
- 挫折ポイント① 専門用語や化学用語が多い
- 挫折ポイント② 序盤のストーリーがダーク
②は銀河鉄道という盛り上がる後半へのフリなんだけどね
あらすじ① 村での生活
主人公である「ジョバンニ」は人との関係性を上手く築くことが出来ずに孤独を感じています。
お父さんは漁に行ったきりで長年家に帰ってきていません。
お母さんは病気で寝たきりです。そのため彼は小学生であるにも関わらず、家計を支えるために活版印刷所に「活字拾い」というバイトをしているのです。
そして物語はある日の授業から始まります。
「天の川が何か知っていますか?」という先生の質問にモジモジしているジョバンニ。そんな彼に気を遣ってわざと正解を言わないカムパネルラ。
その日は村の星祭(ケンタウル祭)です。ジョバンニはいつもの仕事を終え、家に配達し忘れた牛乳を取りにいった広場でザネリやカムパネルラ、他のクラスメイト達に会います。
ザネリとクラスメイトたちは「ジョバンニの父親がラッコを密漁して警察に捕まった」などという噂を使って彼をからかいます。カムパネルラと目が合いますがお互い何も言えません。それに耐えられなくなったジョバンニは丘へ向かいます。
丘で空を見上げるとなぜか星が動き始め光が降り注ぎ、気がつくと列車に乗車しているのでした。さあここから銀河鉄道のスタートです。
あらすじ② 銀河鉄道
列車の中にはびしょ濡れになったカムパネルラがいました。
何故?という感情よりも、彼と久しぶりに一緒にいられることを嬉しく思い、2人は話を始めますが、カムパネルラが不思議なことを言います。
「ザネリはもう帰ったよ。お父さんが迎えに来たんだ」
「お母さんは僕を許してくださるだろうか」
その言葉の意味は分からないまま列車はどんどんと銀河へと進んでいきます。。
列車の外の景色はすごくきれいです。
- 青白く光るリンドウの花
- 銀色に輝くすすき
- 空を舞う白鳥の群れ
この列車は「北十字星」から「南十字星」に向かうというルートなのです。
途中には「白鳥の駅」や「鷲の駅」があります。
やっぱり銀河鉄道999的な宇宙の旅なんだね
違うよ
やがて列車は白鳥の駅に着きます。20分ほど停車する間に二人は列車を降りて近くの水辺に行きます。きれいな光る石を拾い上げジョバンニは喜びます。序盤の苦労しているダークなストーリーを払拭し、楽しい旅が始まる予感をさせてくれます。
そしてこの後も不思議な描写は続きます。
- 鳥を捕まえてお菓子にするおじさん
- 手旗で渡り鳥の交通整理をしている人
- 赤く燃えているさそり座の星
など…
このあたりの美しい文章表現などはぜひ本作を読んで味わってみてください。
その後、列車の旅は進んでいきますが、
車掌が切符を切りにやってきたところでジョバンニが持っている切符が「特別な通行券」であることが分かります。
「僕だけ違う行き先?」
やがて列車が「鷲の駅」に着いたところで、ついにそんな疑問の核心に迫ります。
そこではなぜか西洋風の恰好をした人たちが乗車してきます。その人たちは「乗っていた大きな船が氷山にぶつかり沈んだから今ここにいる」と言うのです。
そんな中、ドヴォルザークの交響曲「新世界」が流れてきます。
お店が閉店するときに流れてるイメージ
そう。何かの終わりを予感させる曲です。
「もしかして…」
- その沈没船はタイタニック号のこと?
- 銀河鉄道は死んだ人が乗る列車なのでは?
ということをジョバンニも薄々感じてきています。
そして列車は最終のサザンクロス(南十字の駅)に到着。
そこには光り輝く大きな十字架がありました。一斉に降りる乗客。そしてカムパネルラと会話している途中でその姿も消えてしまうのです。
「カムパネルラー!!」
あらすじ③ 丘の上
気が付くとジョバンニは元の丘にいました。
「夢か…」と思ったジョバンニは家に向かいます。
牛乳を受け取った後、家へ帰る途中で川に人だかりが出来ているのに気が付きます。何があったのか尋ねてみると
川に落ちたザネリを助けようと川に入ったカムパネルラがもう助からないという衝撃の事実を知ります。
ここで序盤のカムパネルラのセリフが繋がってきます。
(僕が助けた)ザネリはもう帰ったよ。お父さんが迎えに来たんだ」
「お母さんは(友達の為に命を投げ出してしまった)僕を許してくださるだろうか」
あのときのセリフはそういうことだったのか。
そしてジョバンニはカムパネルラのお父さんから
「君のお父さんが明後日帰ってくるらしいよ」という話を聞き、
その希望の話と牛乳を握りしめてお母さんの待つ家へ帰っていくのでした。
ここで物語は終わります。
まとめ
銀河旅行の話かと思いきや、友達を天国へ見送るという切ない話
「なんでこんな物語を作ったんだろう」ということを紐解くためには
宮沢賢治の他の作品にも目を向ける必要があります。
この物語に影響を与えた詩として
永訣の朝
20歳で最愛の妹を亡くしており、その妹が亡くなった雪の降る朝の話。医者からももう助からないといわれている妹が病床で雪を持ってきてくれと頼む。子どもの頃のように雪を食べたいと頼む妹の為に雪を取りに泣きながら駆ける。そんな悲しい詩です。
- 若くして身近な人を亡くしていること
- 上手く弔えなかった・見送れなかったこと
(宮沢賢治は独特の死生観をもっており、自分の思う宗派のやり方ではない方法で葬儀をする家の方針に対立して葬儀に参列できなかった)
雨ニモ負ケズ
「雨にも負けず…」から始まる有名な詩ですが、忍耐強くどういうことをしていきたいかというとところがポイントで、「誰かの為に何かをし続け、最後は笑って死ぬ」という人に私はなりたい。という辞世の句にも似た詩なのです。
この人のために生きることが幸せという価値観。
物語の後半で、ジョバンニも「本当の幸せ」とは何だろうかと悩み、自分も「本当の幸せ」を実現したいと考えるようになっていきます。
この「本当の幸せ」は、銀河鉄道の夜において重要なテーマです。実際物語の中では「本当の幸せ」について何度も言及しています。そのためジョバンニが「本当の幸せ」とは何かを学んでいく心の成長物語として読むこともできます。
ジョバンニは旅をしてから、いろいろな人に出会い、少しずつ「本当の幸せ」について考えるようになります。物語の後半で、自分の命を犠牲にしてまで他の人の幸せを願うサソリの話が出てきます。ジョヴァンニはそのサソリの話を聞いた後に「他の人の幸せのために生きるべき」ということを悟っていきます。そして最後のカムパネルラの死も、ここでは人のために行動した自己犠牲(=死)として描かれているのです。
宮沢賢治が描こうとしている「本当の幸せ」とは、人のために生きることだったのです。
どんな作品よりも宮沢賢治の生きざまこそが美しい最高傑作だよね
あ、最後また良いこと言ってまとめたな(# ゚Д゚)
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