桃太郎?
違います。
1974年に発表された児童文学です。
「モモ」というタイトルだけは知っているという方や子供の頃に読んだという方も多いのではないでしょうか。
そのファンタジーなストーリーは子供でも楽しめますが、
この物語のテーマは「時間」です。
「時間というものが人生において最も価値のあるもの」という概念は
たくさんの「時間」を持っている子供には残念ながら届きずらいのです。
「時間の大切さ」に気付けるのはむしろ時間の無い大人なのではないかと思います。
今回はそんな名作を中田敦彦のYouTube大学で取り扱っていましたので感想も含めてまとめていきたいと思います。
本書は「時間」がテーマの物語となっており、
小さな女の子モモが、灰色の男たちに奪われた時間を取り戻そうと奮闘します。
子どもはもちろんですが、時間に余裕がなく、毎日があっという間に過ぎていく大人にこそ読んで欲しい名作となっております。
あらすじ
モモとその友達
廃墟となった円形劇場に住み着いた、粗末な身なりをした少女「モモ」。
街の人々は相談してモモの面倒を見ることにします。
モモに話を聞いてもらうと何故か硬くなった心が柔らかくなり悩みが消えていく…。
ずっとケンカしていた二人もいつの間にか仲直りしている…。
そんな不思議な力を持つモモは、街の人々にとってかけがえのない存在になっていくのです。
モモには2人の親友がいました。
対照的な2人でしたが2人ともモモのことが大好きでした。
とても聞き上手な少女で物語の主人公。彼女に話を聞いてもらうと心が軽くなる。そんな不思議な能力を持った少女。
モモの親友。ほうきのひと掃きをゆっくり丁寧に大事に掃除をする。同じようにゆっくりと物事を考え、ゆっくりと話すことから周りからはちょっと変わっていると思われている。
モモのもう一人の親友で観光ガイドをしている。口からでまかせで本当かどうか分からない話をするのが得意。有名になることが夢。モモのためだけの物語をモモに話してくれる。
灰色の男たち
そんなある日、街に灰色の男たちが現れすべてが変わり始めます。
「時間貯蓄銀行」からやってきた彼らは
街の中で人生に不満を抱える人間と会い、いかに時間を無駄にしているかを説明します。そして、節約した時間を「時間貯蓄銀行」に預ければ、利子を乗せて支払うというのです。
彼らに騙された街の人々はみんな忙しくせかせかと働き始めます。そして灰色の男たちの記憶は薄れていくので自分の意志と思い込んで効率的に時間を節約していくのです。
子供たちは忙しい親との時間がなくなっていきましたが、
その代わりに、お金を渡され高級なおもちゃをたくさん買えるようになりました。
お金より一緒に遊んで欲しいのに……
あらゆる人々がとにかくスピーディーに、効率的に仕事をすれば豊かになれると信じ始めていました。
「時間貯蓄銀行」を称する集団。彼らの嘘のせいで時間を奪われた人々は心の余裕を失ってしまう。
デモ行進
人々が忙しさから円形劇場へ来なくなったことを不審に思っていると
ある日、モモの元に灰色の男「BLW」がやってきます。
そしてモモの不思議な聞く力によって灰色の男たちの「人間から時間を奪っている」という陰謀が明らかになります。
モモとその仲間たちは灰色の男たちの危険性を大人たちに訴えようとデモ行進をしますが、大人たちは忙しくてそんな行進を見ていません。
デモ行進は失敗に終わり、モモたちは落胆します。
そしてその行動は、逆に灰色の男たちに目を付けられてしまうのです。
危機
落胆しているモモの前に大きなカメが現れました。甲羅に「ツイテオイデ!」という光る文字が浮かび上がり、モモはその言葉通り着いていくのです。
光る文字!!
電光掲示板!?
一方そのころ、とある場所で灰色の男たちが裁判を行っています。そこではBLWが秘密を洩らした裏切り者として「葉巻没収」を宣告されていました。そしてなんと葉巻を没収されたBLWは体がだんだん透明になり消滅してしまったのです。
一部始終をたまたま目撃していたベッポは驚愕しました。そしてモモのことが心配になったベッポは走り出します。
灰色の男たちも、モモが男たちの計画にとって邪魔であると判断し、モモの元へ向かいます。
先に着くのは灰色の男たちでした。
ですが、いくら探してもモモはいません。
ベッポが到着した頃には灰色の男たちはいなくなっていましたが、荒らされた部屋を見て男たちに連れ去られたと勘違いします。
ですが、モモは連れ去られたのではありません。
そう……カメの後を追ってどこかに消えていたのです。カメはまるで危機が訪れるのを分かっていたかのようにモモを逃がしたのです。
灰色の男たちもその何者かの協力の可能性を怪しむのでした。
時を司る者
カメの後を追うモモは途中で「さかさま小路」という場所を通ります。
そこは前に進もうとすると前に進めないという不思議なゾーンでしたが、
「後ろに戻ろうとしなさい」とカメからの助言もあり先に進むことができます。
モモはその先の「どこでもない家」でマイスター・ホラに会います。
そしてホラはモモにこれが何か分かるかと問いかけます。
- 一人目はこれからやってくる
- 二人目はもうここを出かけている
- 三人目だけがここにいる
- 一人目はやがて二人目になるから三人目はそこにいられる
なんだろう?
正解したモモはある場所へ案内されます。
そこは金色に輝く天井、黒くて真ん丸な鏡の池、そしてゆっくりと動く振り子。
振り子が揺れるたびに美しい草木が生えては枯れていきます。
全ての時間の源になっている空間だというのです。
時間の尊さを悟ったモモは仲間たちに伝えようとしますがいつの間にか眠りにつくのでした。
モモを時間の国へいざなう老紳士。全ての人間たちに等しく時間を与えてる。彼が眠ると時が止まる。
変わり果てた世界
深い眠りに落ちたモモが目を覚ますとそこは円形劇場でした。
モモが眠っている間に、なんと1年が過ぎており、灰色の男たちの支配は着々と進んでいたのでした。
丸1年!?
モモはジジからの手紙で勧められたニノの店に行きます。様変わりした店で忙しそうにするニノから情報を仕入れます
ジジは夢であった世界的なスーパースターになっていましたが、毎日忙しくしています。やがて話すネタも底をつき、モモのためだけの物語まで人前で話してしまうのです。空っぽになってしまったジジはモモを探そうとしますが、灰色の男たちに脅迫されてますます時間を奪われていきます。
ベッポはモモの失踪を警察に駆け込んだ際に変人扱いされて病院送りされ、その後灰色の男に「モモを返して欲しければ……」と騙されて時間を奪われていきます。あの丁寧だったベッポの掃除は見る影もありません。
子供たちは「子供の家」という施設で監視され、「将来の為になるから」と大人たちから決められた遊びや言われたことだけをやらされて夢見ることを忘れてしまっているのです。
交渉
ジジもベッポも、子供たちも苦しい状況にある中、
灰色の男がモモの前に現れ
「一人ひとりから時間を奪うよりもまとめて奪うことが出来れば効率が良い」と言うのです。
そしてモモに交換条件を提示します。それは
「モモの大事な人たちを元の状態に戻す代わりにマイスター・ホラの元へ案内しろ」というものでした。
「嫌です」
今まで誰の話も否定せずに聞く力に優れていたモモでしたがハッキリ断ります。
作戦
モモはマイスター・ホラの元へ逃げます。
灰色の男たちは追いかけてきますが
「さかさま小路」の秘密を知らない男たちは前に進めません。
マイスター・ホラの元にたどり着いたモモは助けを求めます。
そこでマイスター・ホラは灰色の男たちの秘密を話します。
男たちが吸っている葉巻は他人から集めた「時間の花」を丸めたもので、彼らはそこから仮初のエネルギーを吸い取って生き永らえている存在だというのです。
つまり葉巻(時間)を取り上げれば良いのか
そしてある作戦をモモに与えます。
- マイスター・ホラが眠り時を止める
- 時間の供給も止まるので男たちは時間が貯蓄してある本部へ補充に向かう
- 本部にある時間金庫を塞ぎ、葉巻からの時間供給を断ち男たちを全滅させる
- 最後に金庫を開放して人々に時間を戻す
対決
モモはマイスター・ホラから「時間の花」をもらいます。
その効果は止まった時間の中を1時間動けるというものでした。
マイスター・ホラの作戦どおりに時が止まると男たちは焦り急いで本部へ戻ります。
彼らの後を尾行して本部へ到着したモモは金庫の門を閉じ、時間の供給を止めると男たちは次々に消滅し、そして全員いなくなりました。
最後にモモは時間金庫を開放しました。
そしてモモはみんなのところに帰り、街の人々は元通りの時間にゆとりのあった生活に戻っていくのでした。
おしまい。
めでたし。めでたし。
まとめ
この物語はミヒャエル・エンデ本人が考えた話ではなく、人から聞いた話だという不思議なあとがきがあります。
この話は昔々……から始まる昔の物語ですが、将来(これから)の物話として始めても同じ話なのだというのです。これは「皆さんの毎日は灰色の男たちに脅かされてはいませんか」という現在社会への警鐘を鳴らしているのです。
灰色の男たちに時間を奪われた人々は、その少なくなった時間で効率や結果だけを求めるあまり余裕がなくなっていきます。
- 丁寧な仕事をする余裕
- 誰かとゆっくり話す余裕
- 家族と過ごすための余裕
私たちも大人になって仕事を始めると自分の時間が短くなっていきます。そしてつい効率化を図ろうとしがちですが、それだけが幸せではないんですよね。
ときには心を休め、他愛もないことに時間を割く。それもまた幸せなのだと思います。
モモの聞く力が人を変えていくという大人向けなメッセージもそうですが、
未来に対して希望を強く持っていたジジに対して、「今このひと掃きを大事に」という今を大事にするベッポは最初から答えを分かっていたのかも知れません。
本当に価値のあるものはお金や物でもない時間であり、
その限られた時間の中で、一日一日を大切にして「今日が良い一日だった」ことを喜ぶ……
そんな当たり前で大事なことを物語を通してモモに教えてもらいました。
教えてもらいました。
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